記事公開日:2020年8月22日
最終更新日:2025年10月3日
「ちょっと狂ったような表情と、大剣を軽々扱う恐ろしき美女?」、なんて形容したくなるような、少々怖い見た目が特徴のキャラ。
そんな女の子が登場する、アーカイブストーリー”Obsidian Blade”の話をたっぷり読んでいこう。ぱっと見は殺人鬼みたいに見える。
Arcaeaストーリー Obsidian Blade
前回は別のストーリーである”Scarlet Cageを見てきた。ここではギターを携えた少女の”調”が、Arcaea世界で目覚めた後のワンシーンを切り取る話。
元々持っていたギターで曲を奏で、服から落ちた裁縫道具は細かいことこそわからないが、確実に自分のものであるという確信を経て前を向く。
記事公開日:2020年7月20日最終更新日:2025年10月3日 「ギターを携えた少女の調とはどういった音を奏でるのだろう」。ロックでゴスロリな雰囲気を纏う女の子の名前は"調"。今回はアーカイブストーリ[…]
さて今回は、別のキャラを主役に据えた”Obsidian Blade”のお話に映る。ここで登場するのは、「ミール」という新キャラ。
外見は少女というより、お姉さんっぽいのだがなぜか幅広の大剣をかざしてちょっと怖い顔でこちらに横目を流すというビジュアル。
Arcaeaオリジナルキャラの中では、割と大人でありちょっとサイコな感じがするのだが、彼女はどんな行動を起こすのだろうか。
その大剣は何のために?
https://arcaea.lowiro.com/ja
前回追求した、”Scarlet Cage”の真下にストーリータイルが存在する。読むためには有料単体楽曲の「GIMME DA BLOOD」の購入が必要。
8-1
月の見えない夜、森が炎に包まれ、村ごと焼け落ちる地獄のような光景が広がる。叫びと破砕の音が満ちる中、ミールは黒く光る鴉石(からすいし)の剣を振るって、煙のように立ち上る異形の獣たちを斬り伏せる。だが斬られた獣は灰や煙に還り、炎に絡んで再び舞い戻る。
個体差も意味を成さない、次々と湧く敵を一匹討っても無意味に思える状況だ。村人たちは必死で逃げ、やがて国の前線に到達する。ミールは背後を一瞥してから、追いすがる主(ぬし)の首を狙って跳躍する。
小柄だが鍛えられた女は、走る者たちに一瞬の礼や感謝のような表情を受け取りつつ、ひたすら斬り続ける。敵が尽きるまで、己の役目は壊し、殺し、屠ることだけ——それが彼女にとって当たり前の衣服のように馴染んでいる。
任務を終え、槍兵隊の前線へ村人が逃げ切ったのを見届けると、ミールは剣を下ろす。溢れる疲労と虚無感が一気に押し寄せ、世界が硝子の虚像のように崩れていくのを感じる。青白い光が満ちる中で、彼女は虚無と疲労を受け入れるように身を委ね、再びArcaeaの世界へと戻っていく。
ある記憶の硝片に入ったミールは、炎に包まれた森の中で異形の獣たちを剣で討伐しているシーン。最初は人を殺してるのかと思ったら、むしろ助けてて安心した。
その中に存在していた住民を助けた後は、元居たArcaeaの世界に戻っていくのだが、どうもガチの剣士だった模様。やっぱり見た目通り細いけど、超武闘派じゃん。


8-2
ミールは自分の名前さえも知らない。目覚める以前の記憶は遠く、失われて久しい。Arcaeaという硝片が彼女を異界へと送り込み、硝片自身が干渉してくるらしいことは知っているが、理由はわからない。
送り先で彼女に課されるのは常に同じ命令――「倒せ」。そして彼女は黒く輝く鴉石の剣を手に、煙のように生まれる異形獣を斬り続ける。剣さばきは驚くほど熟練しており、一騎打ちでは敵に隙を与えない。だが非戦闘の民を守りながら戦うことは、単独戦闘の快楽とは別の難しさを伴う。
最近は戦いの興奮が薄れ、終わった後に残る虚無と疲労が日に増している。戦場から戻ると、白い砂の荒野に足跡を残すだけの世界。時間の感覚は希薄で、「神隠し」のように現実が引き裂かれる頻度も高まった。
そこから立ち現れるのは焦げた畑、塹壕、煙――戦場の残滓だ。しかし弱き民は見当たらず、敵はどこにいるのか、盤上の駒のように顔なき雑多な存在だけがある。ミールは問いかける。私の戦いは、いったいどこにあるのか、と。
彼女も他のキャラと同様、自分の名前すら知らない身。一つ分かるのは、記憶の硝片が別世界へと誘い、ひたすら目の前の異形を倒し続けろと命じてくることだけ。
繰り返した日々を送り続け、段々虚無感が増してくるのはなんとなくわかるかも。結局、“自分の戦い”はどこにあるのかと。生粋の戦闘狂ではなかったんだね。


8-3
戦場は終わらない。ミールは熟練の殺意で次々と敵を討つが、敵は尽きず増援が湧く。赤と青の勢力がぶつかる中、彼女は一瞬の逡巡の末に紅の勢力を潰そうと動くが、背後で庇った者たちが一撃で消し飛ばされるのを目撃する。
上空から降り注ぐ破壊――敵の艦隊と紋章が真の脅威だった。咄嗟に剣を射出して艦隊を切り裂くものの、落下傘で降りてくる兵士たちはただの標的にしかならない現実に直面する。
激戦の熱は薄れ、疲労と絶望が押し寄せる。ミールは自分の判断が招いた惨禍を噛みしめ、耳を塞いで叫びや怨嗟を拒もうとする。何か変えられたはずだと自問するが、答えは見つからない。やがてまた「神隠し」が起き、世界は白く奪われ、いつものArcaeaへと戻される。
地面に崩れ、剣が転がる音だけが響く。彼女は深呼吸しながら、自分が何を求められてきたのか、何を成すべきだったのかを問い続ける。振り返れば長く続く自分の足跡が他の跡と交じり合っていたが、その意味はまだ分からない。祈るように、ただ休息を願う――それだけが、今の彼女に許されたささやかな望みだった。
また硝片に導かれ、闘いの日々を続けるがあまりにも多勢に無勢。いくら自分が頑張っても、どうしても守り切れないという現実はミールに絶望を与えてきた。
そうしてArcaea世界に戻ってきた後は、結局何を求めらているのかを問い続ける。
一人だと単純にカバーできる範囲が少ないから、そうなるのも当然である。しかしよろしくない記憶を映し続ける世界だからこそ、余計にそれに拍車がかかるような。
別にミール自身は、戦いたくて戦っているわけじゃなく、ただ人を守ることが自分の生きる意味だと思っていたからこうしてるだけ。


闘いに身を置く女の祈り
これで今回の”Obsidian Blade”の物語はおしまいだ。ミールもやっぱり、この世界に堕ちた後に自分がなぜここにいるのか、何をすべきなのかを模索する一人のキャラ。
彼女の場合、記憶の硝片から導かれ、命ぜられるままに行動を起こしていたが思うような結果にならないことも増えてきた。ただそれが正しいと思うことを続けるために。
でも安寧の休息くらい欲しいよね。
今回はここまで。次はストーリー名こそ変わるものの、実質の続編みたいな立ち位置にある”Vermilion Shield”に移ろうかな。ミールの旅はまだ終わらない。
記事公開日:2020年8月31日最終更新日:2025年10月6日 「死の淵に立つ女の生き様を、実を持って体感する」。彼女は剣を振るい、記憶の中にいる人々をこれまで幾度となく助けてきた。しかし、一人ででき[…]