記事公開日:2020年8月31日
最終更新日:2025年10月6日
「死の淵に立つ女の生き様を、実を持って体感する」。彼女は剣を振るい、記憶の中にいる人々をこれまで幾度となく助けてきた。
しかし、一人でできるのも限界があり、守り通したかったものを守り切れなかった絶望や罪悪感に囚われ、この世界に生きる。
今回はアーカイブストーリーの”Vermilion Shied”始まりの部分を、みっちり読もう。”ミール”という女の続きの物語だ。
Arcaeaストーリー Vermilion Shied➀
前回はこの”ミール”というキャラが、初登場したストーリーである”Obsidian Blade”を見てきた。この細腕で上半身ほどの大剣を操る。
記憶の硝片内にある世界に入り込み、誰かに命じられるまま異形の者との闘いに身を置く。その強さはまごうとなき本物だが…。
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今回はストーリー名こそ変わるものの、実質的な続編となるので1キャラのアーカイブストーリーとしては少々長めな構成。
さて、命題の通り朱色の盾となって彼女は守りたいものを今度こそ守り切れるのか、その中身を一緒に追っていこうか。
守るべきモノがある彼女


https://arcaea.lowiro.com/ja
一応、前ストーリーの”Obsidian Blade”を見ずに、有料楽曲2つのうち1つを買えば読める。ただ、せっかくなので”ミール”自身は迎えておくべきだろう。
8-4
死の淵に立つ少女を前に、ミールは問い続ける。魂はArcaeaで何に変わるのか、と。これまでは自分ひとりで生き延びることだけを考え、黒曜石の剣だけが伴侶だった。
しかし目の前の光景を見た瞬間、彼女の内にある確信が生まれる。「守るべき命がある」という直感だ。具体的な理由や方法はなくとも、ただ「守らねば」という意志だけが鮮明に訪れる。
ミールはやがて悟る──その少女は運命により死を迎える存在であり、それを変えるために自分がいるのだと。
かつては自分のためだけに戦えばよかったのだが、ある光景を見た後に”誰かの命を守る”使命を帯びた確信を持った。だからこそ、散々前ストーリーで一人孤独に頑張っていた。
そして目の前にいる、死を目前にした少女を改めて見て、その運命を変える義務を感じたのだということ。みすみす、見殺しにできないのは彼女本来の優しさなのかもしれない。


8-5
白い砂の上、倒れた女の前に銀髪の少女が現れる――それがミールと、後に「駒」と名乗るその子との出会いだ。陽光に目眩しながらも駒は気さくに声をかけ、手に楽器めいたものを携えている。ミールは最初、疲弊と虚無の只中で反応が鈍いが、「人か」と呟き、駒の真摯な心配とやわらかな言葉にだけ少し揺れる。
駒もまた記憶を失っており、「自分が何者か分からない」と素直に打ち明ける。やがて駒は自分を「駒だ」と称し、盤上に放り出されたように指示通りに動かされる存在だったと語る──つまり誰かの駒として踊らされる身であるらしい。
互いに名前も過去もほとんど覚えていない二人は、そこに共通項を見出して自然と寄り添う。駒は饒舌に白い砂や空のこと、自分の断片的な記憶を語り続け、臆せずミールのそばを離れない。対してミールは沈黙を保ちがちで、感情表現や機転のきいた言葉をあまり出さないが、駒の話を理解し受け止める。
そうして、記憶を失った二人の孤独が互いの存在によって和らぎ、物語の端緒が静かに開かれていく──出会いと折り合い、そしてこれから共に歩む予感が残る場面である。
ある時、倒れた”ミール”の前に銀髪の少女が出てきた。その娘は楽器を持っているのだが、”ミール”を心配しているようだ。少し会話を交わし、お互い記憶が無いことがわかる。
自然と二人寄り添う形になったが、もしかしたらこの銀髪の少女は、別ストーリーに出てきた”調”の可能性があるね。手に持っているのが楽器というあいまいな言い方ではあるが…。


8-6
砂丘をさまよう二人。饒舌な銀髪の少女が自分の不安や、ここで知っていること――硝片が記憶そのものであることなどを語り、ミールは自分の流血や失敗、疲労について応える。ふたりは互いの欠落を埋め合うように話し続け、少女は「今はそんなに不安じゃない。生きてる人に会えた」と微かな安堵を口にする。
だがその瞬間、ミールの胸に突き刺すような痛みが走る。視線が向かうと、少女の背後に浮遊する不可解な物体が見えた──また「呼ばれている」のだ。銀髪は「音楽もやってたみたい」と呟きつつ、驚愕するミールの視線に、少女は何かに気づいた。
だがミールはすぐ悟る。これは以前に経験した「神隠し」やアノマリーと同種の現象であり、単独の事件ではない。恐怖と絶望が押し寄せ、戦場のそれを超えるほどの慌乱に襲われる。
ミールは痛切に知る。自分の両腕だけでは守り切れない。目の前の少女は、この場で死を迎える運命にあるのだろう、と。言葉にならない確信と無力感だけが、白い砂の上に重くのしかかる。
これまでたどった道筋をお互い話すシーン。ミールはこの世界に堕ちてからの失敗談を、銀髪の少女はここで知ったことや自分の不安が人と出会えてある程度和らいだことを。
しかし記憶の硝片がまたミールに命令を出す。彼女がどこかに消えてしまうかもしれない。そうなると、やっぱり自分だけでは守り切れない、またの絶望が覆い始める感じ。


ミールは守り切れるのか
自分だけが死ぬならまだしも、目の前で他人を巻き添えにして死なせたり、行方不明にさせてしまうのは本当に嫌だ。というのが、ミールの考え方である。
ゲーム中のパートナービジュアルや、ジャケットのイラストを見ただけだとあまりにも真逆なイメージなので、これは吾輩物語を読むまでまったく知らんかった。
なんとか彼女の願いを叶えてほしい。


今回はここまで。次はこの話の続きをまた読んでいこう。
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